In My Head

思考を整理するために書いてます

学ぶとは

少し前のこと

娘が高校卒業後に留学に行きたいと言い出した。

半年の留学で100万ほどの費用がかかるとのこと。

 

そのつもりでお金を工面しようとしたが、娘が留学サポートセンターに相談に行ったら、自分の望む形では勉強ができそうにないことを知り、断念。

 

センターの人に月1、2万ほどのオンライン英会話を勧められたので、自分に合いそうなサービスを探して卒業まで続け、その後英会話が活かせそうなリゾバをして資金を貯めてワーホリ等を利用して海外に行くという話になった。

 

そして今日

良さそうなオンライン講座を見つけたというので見てみると、何と費用が半年で55万円。

月換算すると10万近くになる。

 

正直まず金額に怯んでしまったが、色々と調べてみると、どうやら大人気の英語YouTuberが主催するセミナーらしい。

まだ20代でここ2、3年で設立した会社なのに年収は3.6億円。英語セミナーのほか、webマーケティングセミナーやコンサルも手がけていると知り、合点がいった。

 

彼はイマドキの商売人なのである。実に商売がうまい。実際、英語の解説も非常に丁寧でわかりやすく評判も良いようだ。英語力やコーチング能力は確かなのだろう。

 

彼のやり方は、YouTubeの無料配信で人の心を掴み、LINEのお友達登録をさせる。そして登録した人のみが参加できる無料(もしくは3000円ほど)のオンラインセミナーに誘導し、それを受けた人のみが半年55万円ほどの英語コーチンセミナーに申し込めるという流れだ。

クローズドな場で生徒との距離を確実に縮め、異様に高額な有料セミナーを確実に申し込ませるのである。彼のことを何も知らない私は正直なところ、その流れを見て「怪しすぎる」と感じた。

 

しかし上記の通り、ネットで検索しても評判はすこぶる良いのである。彼は顔すら晒していないのに、である。そのあたりがもう、商売人なのだ。

 

と同時に、私はイマドキの人間のビジネスのやり方や価値観にカルチャーショックを受けた。今はこういう時代なのだな、私の時代とはもう勉強の取り組み方も物事の考え方もまるで違う。

 

要は、学ぶのも稼ぐのもタイパ重視で「短時間で効率良く」が鉄則なのだ。いつでもどこでも気楽に気軽に、自分が望むものだけを学べる。興味のない授業も受けなければならない大学には通いたくない、娘もそういう考えなのだろう。

 

でも私のような人間は本当にそれで欲しいものが手に入るのだろうかと思ってしまう。なんか違うという違和感が拭いきれない。

 

彼が留学せずにバイリンガルになれたのは、彼が自分で自分に合う学習の仕方を見つけられたからなのではないかと私は思う。そしてその方法は人によって違う。

彼が試行錯誤の上に身につけたそのメソッドだけを学ぶのは確かに効率はいいが、勉強において最も大事なのは、メソッドという結果ではなく試行錯誤するその過程なのではないか。

 

一見無駄に思える「調べる」「考える」という過程で人は知りたいと思うもの以上のものを得ている気がしてならない。

わからないことをすぐに質問できるのはとても良い環境だが、その前に自分で辞書を引いたり参考書を調べたりすることもまた重要なのだと思う。

 

娘の学校は学業に力を入れていないため、中学レベルの英語をしていると娘は笑っていたが、じゃあそのレベルの英語の成績はどうなのかというと、60点ぐらいしか取れていない。それなのに学校の英語は役に立たないと言わんばかりに少し馬鹿にしている。

 

自分が英語ができないのは、学校でまともな授業を受けられないからだと思ってはいないか?

そうではない、それ以前に中学生の頃からの自主勉強の方法に問題があるのでは?だから中学レベルの英語も満足に理解できていない。

 

進学校に通い、がっつり受験勉強をした私から見ると、娘は勉強の方法というものを知らないように思える。わかりやすく教えてくれる誰かがいてサポートしてくれたら学力が身につくと思っているのではないかと。

 

でも、効率良く学ぶことなんてできるのだろうか。勉強という行為そのものがそもそも非効率的なもののような気もする。勉強とは物事を理解し、記憶を定着させることであり、理解するにも定着させるにも根気がいる。

 

物事をきちんと理解するためには様々な分野の知識が必要であり、理解したことを脳内に記憶させるためにはある程度の反復学習も必要だ。勉強の方法がアナログからデジタルに移行したとて、人間の脳の構造は変わらないのだから。

そこをすっ飛ばして結果だけを求めても、本質的なところで英語を理解するのは難しいように思える。

 

娘が心酔しているそのYouTuberに関しては、優秀な人だと感心する面もあるが、こうやって人の心理をついてうまいこと商売してるなぁという、いささか冷ややかな目で見てしまう自分もいる。そういう認識だとこれからの時代にはついていけないのかもしれないが。

 

何というか突然訪問販売で100万円の英語教材を買わされそうになったような気分なのだ。

 

正直言って、彼のセミナーを半年間受けても娘が期待しているように英語ペラペラになれるとは思えない。英語への理解は今より深まるとは思うけど、おそらくそこ止まりだろう。

 

もっと言うと、英語だけ勉強すれば英語ができるようになるわけでは決してないことも付け加えておきたい。英語を学ぶためには国語の能力も必須であり、英語圏の歴史文化、地理、宗教の知識も必要なのだ。知識は独立した物ではなく、様々な分野の情報が複雑に絡み合って成り立っているのだから。

 

とはいえ、娘の向学心を応援したい気持ちもあるので、非常に迷っている。ひとまず、彼のYouTube動画を見てみようと思う。話はそれからだ。