In My Head

思考を整理するために書いてます

足るを知る

私には欲があまりないんだろうなと最近思う。好きなものもたくさん欲しいとは思わない。少しで十分満足だ。それが普通だと思っていたが、世の中には欲しいと思ったものは全て手に入れたいという人もたくさんいるんだなと驚いている。

 

私の母はとても厳しい人だった。幼い頃から欲しいと思ったものを買ってもらえる環境ではなかったし、お小遣いも少なかった。だから親に何かをねだったことも数えるほどしかないし、そもそも何かを欲しいと思わなくなったのだと思う。

 

今年、私が大好きなアーティストのツアーがあり、私はチケット販売のかなり初期の段階で希望するチケットを手にすることができた。今までは1ツアーで1公演行けば満足だったが、今回は2公演行くことにした。基本的に地元公演はないので遠征になるわけで、複数公演行くことは、私にとってはかなりの贅沢。欲張った方だ。

 

しかし、SNSを見ると熱狂的なファンが多く、10公演以上参加する人もかなりの数いる。もちろんそういう人はごく一部なのかもしれないが、たくさん行って当たり前という認識を持っている人の多さに驚いた。今流行りの推し活とはこういうことなのだろうと思う。

 

でも、多数の公演のチケットを手に入れるにはかなりの労力を必要とする。FCや各プレイガイド、プロモーターなどの情報をチェックして都度申し込まなければならないし、抽選に漏れると直前販売、機材解放、ゲリラ販売、チケトレなどギリギリまで粘るのである。

それに加えて宿や交通手段の予約も。かかる費用も相当なものだが、それ以上に予約や会場までのアクセスの確認、仕事の調整等の手間ひまを考えると私にとっては絶望に値するレベルである。それを持ってしてでもたくさん会場に足を運ばないと気が済まないのだから、気持ちの強さたるや…

 

私はたとえ時間とお金に余裕があっても、そんなことはしないしできない。人混みが苦手だし、チケットが取れるかどうかで数ヶ月もヤキモキするなんてとても耐えられないからだ。自分の心身の限界は自分が一番よくわかっている。そしてそもそもそんなにたくさん行きたいと思わない。

 

こんなに欲がないことは、わりと幸せなことだと思っている。私のように2公演で満足する人間は、2枚当たれば天にも昇るような気持ちになれるが、10公演行かないと満足できない人が2枚当たっても、2公演「しか」行けないという認識になる。コップの水と同じ原理だ。

 

私は2公演を希望して、行きたい公演のチケットを最速で手に入れることができた。1公演はすでに終了したが、何と最前列だった。これ以上の幸せがあるだろうか。もう十分である。実は別のアーティストでも半年前に最前列ど真ん中という経験をしている。ただの偶然なのか、欲をかかないから神様が一球入魂でいい席を用意してくれているのかはわからないが。

 

幸せのハードルが低ければ低いほど、人生の幸福度は増すものだと思っている。「足るを知る」とか「身の丈」という言葉があるが、私のような小さな人間は日常の些細なことに喜びを感じ、身の丈以上のことは望まない方が幸せを感じやすい人間になれる気がする。